大阪・関西万博静岡県ブース「GEO KITCHEN SHIZUOKA」では、静岡の食の魅力を地理・地形、歴史、文化などによって生まれた食材や料理、その過程でかかわる生産者、料理人など様々な角度からふんだんにアピールすることをコンセプトにしていますが、一番大切にしていることの一つは「味わうこと」。
ブースの最後のゾーン~ 静岡の食をより深く味わうイベント広場~ 「FOOD CAPITAL PARK」では、今回のブースのために考案された静岡料理「お茶漬け」を提供いたします。
その「お茶漬け」の考案を担当するのが、静岡県焼津市にお店を構える株式会社サスエ前田魚店5代目代表前田尚毅氏です。地元客向けの小売だけではなく、その仕込み技術は、国内外の名だたる飲食店からも納品オファーが殺到しています。近年は、静岡の料理人とタッグを組み、食を通じた静岡県への誘客に関しても精力的な活動を行なっています。そんな前田氏が考える「お茶漬け」とは?初回の打ち合わせの様子をお伝えします。
ミラノ万博からの系譜で生まれた提供メニュー「静岡お茶漬け」
2015年に開催されたミラノ万博の翌年、ミラノ万博での静岡県のプレゼンテーションを見たミラノのジェトロ(日本貿易振興機構)から前田氏に依頼があった。依頼内容は、静岡の特産品を最大限に活かした料理を提供すること。その際に、前田氏とミラノに行ったのは天ぷら成生(なるせ)だった。
「日本を代表する料理といえば、天ぷらや寿司が真っ先に思い浮かびます。しかし、これらの料理は既に多くの人に知られており、目新しさに欠けます。私自身が静岡出身であるため、地元の特産品を使うことには特段の思い入れがありますが、静岡の豊かな食材を活かし、一皿に静岡の魅力を詰め込むことができる料理は何か?、地元のもので何が一番の武器になるか?を書き出し、それらを料理としてどのように組み合わせるかを考え生まれたのが、かつお節をベースにした静岡らしい一品「静岡お茶漬け」です。」と前田氏は語る。
今回、お茶漬けを選んだ理由はそんなミラノ万博後の取組がいいヒントになったという。選定理由はいくつかあるようだが、料理としての完成度が高く、天ぷらや寿司と違って提供するスピードが速い点も重要だという。「大人数に対して迅速に提供できるスピードが求められるこのようなイベントでは、お茶漬けの利便性が非常に大切になります」。確かに、待ち時間があると人はブースから離れていく、そんなイベントだ。
「静岡お茶漬け」は、静岡の豊かな食材を活かし、静岡の魅力を伝える一品だ。
前田さんにとっても新しい取り組みとなる万博静岡県ブースとは?
「万博の行政ブースでトップシェフが腕を振るうって他にないんじゃないですか?」確かにそうかもしれない。国内外で評価を集める料理人がこの3日間のためにメニューを考案し、3日間提供するブースはないのかもしれない。それが実現するのも前田氏と行政との関わり方がここ数年で変化したことによるものかもしれない。
静岡県は、数年前から全国トップクラスの多彩な「食材の王国」である優位性を生かした観光振興を図るため、ガストロノミーツーリズムを推進している。前田氏は立ち上げ時の有識者のお一人。料理業界からみた静岡の在り方、見られ方について示唆することも少なくはない。昨年度の「静岡県食と温泉文化フォーラム」では「食のバトンをつなぎ、新たな価値を生み出す」と題し、サカエヤ代表取締役 新保吉伸氏、ジオード代表取締役 門上武司氏とともに静岡の食の魅力を語り合ったり、静岡県のガストロノミーツーリズムブランド「美味ららら」を体感するダイニングイベントの記念すべき第一回目では自らプロデューサーを務めた。
普段は漁師・料理人とタッグを組む前田氏だが、「行政との取り組み」はそんな今までの取組と信頼のおけるチームができあがったからだと話す。「静岡の食が注目されています。それをうまく町づくり、町おこしにつなげていく“走り”になりたい。飲食店と官民の取り組み方が変わります。」
最後に前田さんに万博の思い出を伺ってみた。「ガキの頃、万博に亡くなったじいさんが連れてってくれたんですよ。初孫だからって。その写真があって。」愛知万博は観光領域で関わったようだが、当時は「力も無くて、全然アイディアもなかった」今回は、実力のある仲間たちもいるのでと話す前田氏。前田氏にとっても記憶に残るものになるのではないかと思う。
天ぷら「成生」、茶懐石「温石」など複数人の料理人が考案に関わるチームサスエ前田の「静岡お茶漬け」ぜひ、会場でご賞味ください。
前田氏は、食と観光誘客に関しても精力的に取り組んでおり、数十年前からの構想を実現している。そんな前田さんが今回の静岡県ブース後のレシピの活用について思案を進めている。今後も、この「お茶漬けプロジェクト」でもその様子を掲載したいと考えています。次回は担当するシェフのご紹介を予定しています。どうぞお楽しみに。
前田尚毅氏プロフィール 株式会社サスエ前田魚店代表。1974 年、静岡県焼津市生まれ。60 年以上続くサスエ前田魚店の 5 代目店主。地元客向けの小売だけではなく、その仕込み技術は、国内外の名だたる飲食店からも納品オファーが殺到するほど。2021 年にはミシュランと並ぶ強い影響力を持つフランスのグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ」 より生産者に贈られるテロワール賞を国内鮮魚店として初めて受賞。 「プロフェッショナル仕事の流儀」(NHK)や「情熱大陸」(MBS)など多くのメディアでも取り上げられる。 近年は、静岡の料理人とタッグを組み、食を通じた静岡県への誘客に関しても精力的な活動を行なっている。 https://sasue-maeda.com/ |
【関連リンク】
前田尚毅氏プロデュース 静岡県ガストロノミーツーリズム ダイニングイベント「第一回美味らららダイニング 富士山から駿河湾~日本一の高低差~」
2023年11月29日(水)に、静岡県が主催する「美味らららダイニング」が「富士山本宮浅間大社」(静岡県富士宮市宮町1-1)で開催されました。静岡県では、全国トップクラスの多彩な「食材の王国」である優位性を生かした観光振興を図るため、ガストロノミーツーリズムを推進しています。その一環として、ガストロノミーツーリズムの静岡県ブランド「美味ららら」にちなんで「美味らららダイニング」(ダイニングイベント)を開催。世界の料理人が注目する焼津のサスエ前田魚店の店主・前田尚毅氏が総合プロデュースを担当し、普段は食事のできない「富士山本宮浅間大社」を会場に、国内外から注目を集める静岡県と新潟県のトップシェフ4名が、静岡県産食材をふんだんに使った、一日限りの特別な饗宴を実現。この日のテーマは「富士山から駿河湾~日本一の高低差~」。富士山からスタートし、地上、そして海に入り、深海、そして最後は地球のマグマへと、それぞれの場所を表現した料理が展開されました。
前田尚毅氏登壇「ふじのくに食と温泉文化フォーラム」(2023年11月1日)レポート
2023年11月1日に開催された「ふじのくに食と温泉文化フォーラム」の【トークセッション】「食のバトンをつなぎ、新たな価値を生み出す」の動画とレポートはこちら。静岡の食の魅力をサスエ前田魚店店主 前田尚毅氏、サカエヤ代表取締役 新保吉伸氏、ジオード代表取締役 門上武司氏が語りました。
https://shizuoka-gastronomy.jp/topics/463
料理通信「静岡ガストロノミー」はいかに誕生したか? 世界のフーディーの目的地になるまで
(引用)今や、世界のフーディー(美食家。おいしいもののためならば、世界中を旅する人々)や世界的なレストランガイドからも注目されるレストランが増えつつあるのが静岡。つまり、静岡を目指して、国内外の食いしん坊たちがやって来る。そんな時代になっているのです。
https://r-tsushin.com/journal/japan/shizuoka_gastronomy/#page-1
前田氏が「下手な映画を見るよりよっぽど心を揺さぶられる」という静岡県のガストロノミーツーリズムブランド「美味ららら」ブランドムービー
前田氏が、「画像見ないで音だけ聞くだけでも温度を感じる、画面を見ると、さらにあぁそうだよな、静岡って街から一歩抜けた時にはもう大自然があって都会にはない温度ってあると思うんですよ。感じる温度っていうか、あの映像全部入ってる。すごい良かったです」と語るブランドムービーはこちら。