静岡県ブース「GEO KITCHEN SHIZUOKA(ジオキッチン静岡)」ではブース入り口でウエルカムドリンクとして静岡茶を使用した「静岡のお茶のだし」をみなさまに召し上がっていただきます。「お茶のだし」について当日も調理を担当してくださる懐石いっ木 一木敏哉さんにお話を聞いてきました。
「お茶のだし」とは?
「日本の食文化において鰹節と昆布の「だし」は和食の根幹をなす貴重な要素です。しかし近年、気候変動などにより海産物の不漁が叫ばれています。だしの要である昆布もその例外ではありません。昆布にはグルタミン酸が、鰹節にはイノシン酸という旨味成分が含まれており、この二つの旨味成分をかけあわせることにより単体と比べ7〜8倍の旨味を感じられるのですが、昆布が採れなくなってしまうと、大事な旨味成分であるグルタミン酸が欠けてしまいます。そのため、昆布に代わる、このグルタミン酸が含まれている食材が重要になるのですが、それが実はお茶なんです。
そこで、サステナブルの観点から“静岡県ならでは”の和食文化としてお茶と鰹節による「お茶のだし」を皆様にご賞味いただきたいと考えました。」と語ってくれました。
お茶が最適!?ほかの食材ではダメなのか?
お茶が昆布の代替えになるということも新感覚ではありますが、一木さんの話の中では他の食材についても触れられていました。
「日本食において昆布だしがなぜよいか?それは、昆布は裏方、下支え的な存在で表に出てこないので料理の邪魔をしないからです。そのうえ、旨味成分を豊富に含んでいます。グルタミン酸を多く含む食材には昆布のほかにトマトがありますが、トマトを使っただしはトマトの味がします。トマトが前に出すぎちゃうですね。それに対してお茶にもグルタミン酸が多く含まれるのですが、トマトほど主張がない食材です。」替えが利かないとされていた昆布ではありますが、お茶はその昆布に代わることが期待されます。
「静岡県の独自のだしという観点でも、 “水”“鰹”“お茶”すべてが揃うお茶のだしは地方色もだせると考えています。」サステナブルの観点、さらに静岡県のアピールとしても今後、静岡県産のお茶を活かしただしが、新たな日本食の一端を担い、地域の魅力を伝える存在となることが期待されています。
ミラノに続き、大阪・関西万博静岡県ブースに向けて
一木さんは、10年前のミラノ万博にも静岡県を代表する料理人として参画、鰹節と日本酒のアピールを行ないました。「万博後も、一緒に行った料理人である西谷さんや在来蕎麦たがたの田形さんとは今でもやり取りがあります。万博に関わることでずいぶん人脈や活動も広がりました。」お互いの分野は違えど、共通の想いや体験がその後の活動に活かされている様子。万博はそんなネットワーキングも大切な役割。今後、「オール静岡」で静岡県をアピールしていく上でも重要な取り組みとなります。
静岡県の食の魅力を語るうえで欠かせない和食。その和食を支える“だし”が近い将来、危ぶまれている事実、みなさんはご存じでしたでしょうか?大阪・関西万博静岡県ブースで「お茶のだし」を通じて、これからの和食文化を支えることになるかもしれない“静岡茶の可能性”をぜひ感じていただきたいと考えています。
一木敏哉氏(懐石いっ木/浜松市)プロフィール 京都「菊乃井本店」での修行を経て2006年浜松にて「懐石いっ木」を開店。2017年ミラノ万博、日本館にて静岡県食材、日本酒、日本のだしを紹介。2024年に5回目の仕事人オブザイヤーを受賞し、マエストロシェフの称号を得る。 |
【関連リンク】
静岡県ガストロノミーツーリズム ダイニングイベント「第二回美味らららダイニング「ふじのくにの新和食」新進気鋭の和食料理人が一日限りの饗宴」
2024年2月15日(木)に、静岡県が主催する「美味らららダイニング」が「ふじのくに茶の都ミュージアム」で開催されました。静岡県では、全国トップクラスの多彩な「食材の王国」である優位性を生かした観光振興を図るため、ガストロノミーツーリズムを推進しています。その一環として、ガストロノミーツーリズムの静岡県ブランド「美味ららら」にちなんで「美味らららダイニング」(ダイニングイベント)を開催。 ダイニングのコンセプトは「ふじのくにの新和食」。地球沸騰化の時代が到来し、より地球に優しい行動を心掛ける意識が大きくなってきている今の時代に、多彩な食材に恵まれる静岡県で料理人は何ができるのか?「ふじのくに食の都づくり仕事人」でもあり、静岡を代表する新進気鋭の2人の和食料理人が手を組み、アイデアと技術を駆使した新しい和食に挑戦しました。海のもの、山のもの、その全てに感謝し、古から未来へ静岡の食の豊かさを繋げていくイベントになりました。