6月6日(金)〜8日(日)、大阪・関西万博 ギャラリー WEST にて「GEO KITCHEN SHIZUOKA」が開催されました。静岡県の食の魅力を “見て・味わって・体験する” 本ブースには、3日間で延べ19,400人の来場者が訪れました。
本記事では、3日間の様子を振り返りながらブース内の各コーナーをご紹介します。
ウェルカムゾーン 〜GEOの恵みを味わうおもてなし〜
ファサード「しずおか食の地図」

ブースの正面を飾るのは、静岡の多彩な食文化を一望できる「しずおか食の地図」。地球環境史ミュージアムの佐藤洋一郎館長作成の地図を、地球暦の考案者杉山開知氏が浮世絵調で描いたものです。この大きな地図の前で写真撮影をしたり、足をとめてじっくり眺める来場者の姿が多く見られました。
右手奥には、3日間のプログラムを掲載したタイムテーブルを設置。お目当てのコンテンツを確認して、複数回来場してくださった方もいました。
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ウェルカムドリンク「お茶のだし」でお迎え

ブースの入り口では、一木敏哉さん(懐石いっ木/浜松市)による「お茶のだし」をウェルカムドリンクとして来場者にお渡ししました。昆布と同じ旨味成分のグルタミン酸を含む「お茶」と、同じく旨味成分であるイノシン酸が含まれる「鰹節」をかけあわせて生まれた「お茶のだし」。口に含むと旨味の濃い味が広がります。

また、来場記念として静岡県のイメージキャラクター「ふじっぴー」と大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」が並んだカードや、ロゴ入りシールも配布。万博スタンプラリーを楽しむ方に向けては、GEO KITCHEN SHIZUOKAのスタンプもご用意しました。
SHIZUOKA FOOD THEATER〜GEOを感じるシアター〜


3台のモニターによるダイナミックな映像と音により「静岡の自然と食」の映像体験ができる「SHIZUOKA FOOD THEATER〜GEOを感じるシアター〜」。次々に映る美しい風景や、食材とその生産風景、美味しそうな料理の映像に訪れる方々も見入っていました。
※映像とロケ地情報は「SHIZUOKA FOOD THEATER・VRロケ地情報」でもご覧いただけます。
深化ゾーン 〜DISCOVER SHIZUOKA〜
ウェルカムメッセージと和食展のご紹介

「深化ゾーン〜DISCOVER SHIZUOKA〜」の入り口には、地球環境史ミュージアムの佐藤館長によるウェルカムメッセージと「しずおか食の地図」の解説パネルを掲載。また、2025年10月11日から清水マリンビル、フェルケール博物館で開催予定の「和食展しずおか」より、「缶詰王国しずおか」「家康も好んだ折戸なす」「しずおかの日本酒ラベル」についての小パネルも展示しました。
35市町ポスター

静岡県内35市町の魅力を伝えるポスターがずらりと並んだコーナーです。ポスターには各市町の詳細情報にアクセスできるQRコードが付いており、併設されたパンフレットラックからは資料を自由にお取りいただきました。
来場記念抽選会も実施

コーナーの一角では、静岡県産のクラウンメロンやわさびドレッシングが当たる来場記念の抽選会も行われ、毎日たくさんの方が参加されていました。
静岡の未来に残したい食の伝統・風景と食の新しいカタチ

茶草場農法や静岡伝統わさびの栽培(日本農業遺産)、静岡ウェルネスプロジェクト、セルロースナノファイバーの食品応用、茶殻リサイクルシステム、カカオハスクのアップサイクルといった静岡県内のSDGsの取り組みを、パネルや映像、実物展示でご紹介するコーナーです。正面奥には、「世界お茶まつり」のフォトコンテストに出品されて現在選考に進んでいるお茶畑の絶景写真も展示しました。

体験ゾーン ~VRやワークショップで体験~
続いては、静岡の風土や文化を「体験」を通して楽しめるゾーン。バーチャルサイクリングやVR体験、AI診断、ワークショップなど、多彩なコンテンツが揃いました。

バーチャルサイクリング体験

WONDER VISION TECHNO LABORATORY社の大型半球体スクリーンを使った没入型体験「バーチャルサイクリング」。自転車をこぐ速さにあわせて映像が変化し、富士山が見える駿河湾沿いの海岸線や、茶畑の広がる風景を走っているような感覚を味わえます。体験者は思い思いのペースで、静岡の風景を楽しんでいました。
VR体験「お茶とわさびの風土を巡る空中散歩」

双眼鏡型のデバイスをのぞき込むと、まるでその場にいるかのような静岡体験が広がります。
水わさび食体験VR:伊豆市筏場のわさび田を訪れたのち、鉄板で焼かれたステーキにわさびが添えられて提供されるまでの流れを疑似体験。まるで目の前に料理があるようなVRで、食欲が刺激されます。
空中散歩VR〜お茶形成風土編〜:富士市・大淵笹場の上空を滑空するような映像で、広がる茶畑の絶景を楽しんでいただきました。
AIお茶診断「テクノロティー」

日本有数のお茶どころ・静岡県ならではのユニークなAI診断体験も人気を集めました。脳波・表情・心拍をAIが計測・分析し、その人に合ったお茶を導き出します。
診断結果をもとに12種の茶葉から最適な3種をその場で合組(ごうぐみ)し、パッケージしてお渡し。たとえば、「集中力が高まった状態」に合わせて導き出されたブレンド名は「心映る静謐なメロディ」。体験者からは、「その場でブレンドしてもらえるのが面白く、家で飲むのが楽しみ」という声も寄せられました。
簡易体験版では、1分間の表情分析から3タイプ(アクティビティー/クリエイティビティー/ケアフルティー)を判定し、対応するティーバッグをプレゼントしました。

ワークショップコーナー
ワークショップコーナーでは、静岡茶を染料に用いた「お茶染め」と、静岡市が世界に誇る「プラモデル作り」の2種類の体験を、時間交代制で実施しました。
お茶染め

お茶染め体験を担当したのは、「駿府の工房 匠宿」の染工房長であり、「鷲巣染物店」五代目の鷲巣恭一郎さんとお弟子さん、スタッフの皆さん。

あらかじめチャコールグレーに染められた巾着に、廃茶葉を原料とした染料をハンコで押して模様をつけていきます。用意されたハンコは、静岡県のキャラクター「ふじっぴー」や、徳川家康、富士山、わさび、茶畑など、静岡らしいモチーフの中から1つを選びます。

ハンコを押した部分には抜染(ばっせん)という技法が使われており、乾燥の後に熱を加えることで、模様が金茶色に浮かび上がる仕組みです。体験者からは「ほんのりとお茶の香りがする」「新鮮な体験」「初めてでも気軽に楽しめた」といった声が寄せられました。

プラモデル作り体験

静岡市は、国内プラモデル製造出荷額の約8割を誇る“プラモデルのまち”。1日3回、それぞれ異なるキットを使ったワークショップが行われました。
- 第1回:TAMIYA「ミニ四駆」
- 第2回:青島文化教材社「トコトコミニオン」
- 第3回:ハセガワ「たまごひこーき T-4 ブルーインパルス」
初めてプラモデルを作るという方も多く、ニッパーを手に夢中で組み立てる姿が印象的でした。

市町PRコーナー
日替わりで16市町が登場!個性豊かな展示が勢ぞろい

市町PRコーナーには、静岡県内から計16市町が日替わりで出展。それぞれの地域の特色を活かした展示が並びました。鰹節削り体験、パンフレットやノベルティの配布、地元食材の紹介などが行われ、各日とも大変な賑わいを見せました。
- 1日目(6月6日(金)):島田市、磐田市、焼津市、掛川市、菊川市、森町
- 2日目(6月7日(土)):浜松市、藤枝市、伊豆の国市、西伊豆町、富士市
- 3日目(6月8日(日)):静岡市、熱海市、富士宮市、袋井市、裾野市
どの市町のブースにも、地域の魅力や食文化を伝えるための工夫が凝らされており、立ち寄った来場者からは「お土産もいただけて嬉しかった」「今度は実際に訪れてみたい」といった声も聞かれました。
各市町ブースの様子はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
定着・行動ゾーン「FOOD CAPITALPARK~静岡の食をより深く味わうイベント広場~」

プレミアムキッチンカーによる試食
キッチンカー「BISTRO LAND SHIP」では、静岡のお茶漬けと各市町の食材を使ったオリジナルメニューを、日替わり・時間交代制で提供。
静岡のお茶漬け



「静岡のお茶漬け」は、本ブースのために焼津市の「サスエ前田魚店」代表・前田尚毅さんが考案した特別メニューです。「グランメゾンなどトップとの取引だけと思われがちですが、実は町の魚屋なんです。今回は誰もが知る身近な魚であるイワシを使ったお茶漬けにしました」と前田さん。
太陽の力で旨みを凝縮させた天日干しイワシを香ばしく焼き上げ、さらに、駿河湾産の乾燥した桜エビ、コク深い浜松の浜納豆、シャキシャキとした伊豆産わさびの茎をトッピング。仕上げには、焼津港で水揚げされた小魚の頭と骨で取った出汁に抹茶を合わせ、「お椀の中に静岡を詰め込んだ」一杯に仕立てました。
料理の温度管理にもこだわり、出汁は提供直前に来場者の目の前で注がれます。「小さいことに大きな努力が大事。手間を手間と思わずに行うことで、食材のポテンシャルを引き出します。焼津はいろんな魚がおり、春夏秋冬の違いもあって楽しい」と語る前田さんの姿も印象的でした。
この「静岡のお茶漬け」を「チームサスエ前田」として共につくり上げたのが「静岡のローカルガストロミーの担い手」Simples(静岡市)のシェフ・井上靖彦さん。
ステージでは、徳川家康と静岡わさびの関係や浜納豆にまつわる逸話、抹茶の代表品種「やぶきた」が静岡発祥であることなど、食文化の背景に触れるトークも披露され、「食べて、知って、味わう」時間が展開されました。
試食した方からは、「魚の出汁とイワシが濃厚で深い味わい」「わさびの茎がアクセントになっていて美味しい」といった声が寄せられました。
市町イチオシ食材を使ったオリジナルメニュー

10年前のミラノ万博に静岡代表シェフとして参画した「ふじのくに食の都づくり仕事人」マエストロシェフ・西谷文紀さん。 今回の大阪・関西万博では、静岡県内の各市町が誇る食材を使った万博限定のオリジナルメニューを3日間・全9回にわたり提供しました。
1日目(6月6日(金)):
- 11時〜【焼津市】天然焼津ミナミマグロのタリアータ
- 14時〜【森町】遠州森町もろこしパウンドケーキ、森町スイートコーンジェラート
- 17時〜【吉田町・川根本町】吉田うなぎの至高の一口結び、川根煎茶のジェラート
2日目(6月7日(土)):
- 11時〜【浜松市・湖西市】浜名湖うなぎ 手まり仕立て
- 14時〜【富士市】田子の浦しらすと富士山麓わくわくコーンの ムース、 ほうじ茶のジェラート
- 17時〜【藤枝市】静岡そだちのローストビーフサラダ仕立て、飛鳥山のジェラート
3日目(6月8日(日)):
- 11時〜【富士宮市】紅富士ニジマスのカルパッチョ南伊風、おおまさり( 落花生) のジェラート
- 14時〜【牧之原市】自然薯の冷製ポタージュ 押し麦とともに
- 17時〜【静岡市】駿河湾の恵み桜海老のカナッペ 本山葵のヴィネグレット
市町オリジナルメニューの詳細レポートはこちらの記事をご覧ください。

プレミアムキッチンカーによる試食は、予想を上回る多くの方にご来場いただき、毎回大盛況のうちに配布を終えました。何度も足を運ばれる方も多く、中には他のパビリオンの予約をキャンセルして再訪された来場者の姿も。静岡の様々な食の魅力を実感いただける場となりました。
また、調理補助やサーブを担当した学校法人鈴木学園 中央調理製菓専門学校静岡校の学生たちからは、「普段触れたことのない食材を扱ったことができて勉強になった」「静岡県は海と山の両方が揃っているので、それぞれの魅力を活かした多彩な食材を使っていきたい」といった感想や、今後の意気込みの声も聞かれました。
静岡茶の呈茶

静岡茶の呈茶(試飲)コーナーには、3日間で日替わり計10市町が登場。それぞれの地域が誇る緑茶、ほうじ茶、ボトリングティーなどを提供しました。壁面に掲出された「しずおか茶産地エリアマップ」を眺めたり、各市町のお茶の特徴についてスタッフの説明を熱心に聞く来場者の姿も見られました。「こんなにたくさんの産地があるなんて知らなかった」「飲み比べて味の違いがわかった、どれも美味しい」といった感想が寄せられ、静岡のお茶文化の多彩さを体感いただける場となりました。
お茶の呈茶コーナーの詳しいレポートはこちらの記事をご覧ください。
振る舞い酒

18時からは静岡県酒造組合の協力による「振る舞い酒」の時間。ブースの前には日本酒の菰樽(こもだる)が置かれ、呼びかけに誘われて集まった来場者の長い列ができました。提供されたのは、土井酒造場、初亀醸造、高嶋酒造、富士高砂酒造、遠州山中酒造など県内12蔵の選りすぐりの地酒。※ラインナップはこちらの記事をご覧ください。
日替わりで蔵元も登場し、来場者一人ひとりにお酒を注ぎながら言葉を交わし、和やかな交流が生まれていました。

1日目に登場された萩錦酒造の萩原氏は「富士山の麓で夏は酒米を育て、冬は酒を仕込んでいます。『誉富士』は山田錦をベースに、稲が倒れにくいように短く改良された静岡県オリジナルの酒米です。お酒の地理的表示(GI)静岡を受けた地酒を、日本から世界へ発信していきたい」と話されました。


2日目は富士錦酒造の清氏、3日目は神沢川酒造場の望月氏が登場し、静岡県のお酒や銘柄の魅力を語っていただきました。来場者からは「今までは静岡にお酒のイメージがなかったけれど、今回初めて魅力を知った」といった声も寄せられました。「水が美味しいからお酒も美味しい。ぜひいろんな銘柄を楽しんでください」と、蔵元の言葉にうなずく方の姿も見られました。
AIがあなたにぴったりの一杯を診断「日本酒AI」体験

AIを活用した日本酒サーバー「ShuSen」は、一橋大学・青木研究室とスペースクリエイション(浜松市)による共同開発。アンケート回答を元に、相性の良い日本酒を自動で注いでくれます。診断によって普段とは違う味に出会った来場者から、「普段は甘口を飲んでいたら、AIに勧められて飲んだ辛口も美味しかった。新しい好みを知るきっかけになった」といった感想も寄せられました。

静岡県ブースが万博に登場した3日間、食文化を中心とした様々な魅力を知っていただいたことで、今回を機に静岡県を旅して食を楽しみたいという声も多く聞かれました。次回はぜひ、静岡県でみなさまにお会いできることを楽しみにしております。
